静岡で交通事故の民事裁判を検討中の方へ|静岡県の裁判所の管轄・流れを弁護士が解説

静岡県内で交通事故に遭い、加害者側の保険会社が提示する示談金に納得がいかない、あるいは交渉がまとまらないといった状況でお悩みではありませんか。

当事者同士の話し合いである「示談」で解決しない場合、法的な手続きである「民事裁判」が次の選択肢となります。
実務上、交通事故の民事裁判は“すべてのケースで起こすべき手続き”ではありませんが、一定の条件に当てはまる場合、裁判を選択することで賠償額が大きく変わることがあります。
しかし、裁判と聞くと「手続きが複雑そう」「費用や時間がかかるのでは?」といった不安を感じる方も少なくないでしょう。

この記事では、静岡県で交通事故の民事裁判を検討している方のために、裁判の基本的な知識から、静岡県内のどこの裁判所で手続きをすべきか(管轄)、そして提訴から解決までの具体的な流れについて、専門的な内容を高校生にもわかるように、かつ実践的に解説します。

交通事故の「民事裁判」とは?示談で解決しない場合の選択肢

交通事故の損害賠償問題は、多くの場合、加害者側(通常は保険会社)と被害者との間の話し合い、すなわち「示談」によって解決が図られます。示談は、当事者双方が譲歩し合い、納得できる賠償額について合意することで、紛争を早期に解決するための手続きです。

交通事故の示談交渉では、主に以下のような点について話し合われます。

  • 治療費、休業損害、慰謝料などを含む「損害賠償の金額」
  • 事故の責任が双方にどれくらいあるかを示す「過失割合」
  • 賠償金の支払い方法や、示談成立後に新たな請求をしないことを確認する「清算条項」など

交通事故の示談交渉について詳しく知りたい方は、「交通事故の示談交渉では何を話し合うのか」をご参照ください。

もっとも、こうした示談交渉がうまくいかないケースもあります。賠償額や過失割合などで合意に至らない場合、次の手段として「民事裁判(民事訴訟)」を検討することになります。

民事裁判とは、当事者間の話し合いによる自主的な解決(示談)とは異なり、裁判所に訴えを提起し、法的な判断(判決)によって紛争を解決する手続きです。

もちろん、裁判の途中であっても、裁判官の仲介のもとで話し合い、和解によって解決することも可能です。

裁判所の種類と「140万円」の分岐点

交通事故の民事裁判を提起する際、どの裁判所を利用するかは、請求する損害賠償の金額、すなわち「訴額」によって決まります。ここでは、第一審を担当する「簡易裁判所」と「地方裁判所」の使い分けや、その後の不服申し立て手続きについて解説します。

簡易裁判所と地方裁判所の使い分け

交通事故の損害賠償請求訴訟において、第一審の裁判所が簡易裁判所になるか、地方裁判所になるかは、請求する金額(訴額)によって決まります。この分岐点となる金額は140万円です。

  • 訴額が140万円以下の場合:簡易裁判所
  • 訴額が140万円を超える場合:地方裁判所

たとえば、物損事故などで請求額が比較的低額な場合は簡易裁判所、死亡事故や重い後遺障害が残る人身事故などで請求額が高額になる場合は地方裁判所が管轄となります。

控訴審(高等裁判所)の役割

第一審(簡易裁判所または地方裁判所)の判決に不服がある場合、上級の裁判所に不服を申し立てることができます。これを「控訴」といい、控訴によって開かれる第二審の裁判を「控訴審」と呼びます。

  • 第一審が簡易裁判所の場合→地方裁判所が控訴審を担当
  • 第一審が地方裁判所の場合→高等裁判所が控訴審を担当

控訴審では、第一審の判決が妥当であったかどうかが改めて審理されます。さらに第二審の判決にも不服がある場合は、最高裁判所へ「上告」するという道も残されています。

交通事故における「訴額」の計算

「訴額」とは、裁判で請求する金額のことで、正式には「訴訟物の価額」といいます。これは、原告(被害者)が訴えによって主張する利益、つまり「判決で請求が認められた場合に得られる経済的利益」を客観的に金銭評価した額です。

交通事故の損害賠償請求では、具体的に以下の項目を積み上げて計算します(個別損害積上げ方式)。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害逸失利益
  • 後遺障害慰謝料
  • 弁護士費用 など

これらの損害項目を一つひとつ計算し、合計した金額が訴額となります。

静岡県で交通事故の民事裁判を起こす場合の管轄裁判所

いざ裁判を起こすとなっても、日本全国のどの裁判所に訴えを提起してもよいわけではありません。事件をどの地域の裁判所が担当するかというルールを「土地管轄」といいます。

ここでは、交通事故裁判における管轄の基本ルールと、静岡県で裁判を起こす場合の考え方について解説します。

「管轄」の3つの基本ルール

交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では、被害者は以下のいずれかの場所を管轄する裁判所に訴訟を提起することができます。複数の裁判所に管轄が認められることも珍しくありません。

  • 加害者(被告)の住所地
    相手方の住所地を管轄する裁判所に提起できます。
  • 交通事故の発生場所(不法行為地)
    事故が起きた場所を管轄する裁判所にも提起する権利があります。
  • 被害者(原告)の住所地(義務履行地)
    損害賠償金の支払いは、被害者の住所地でなされるべき「義務」と解釈されるため、被害者の住所地を管轄する裁判所にも提起できます。

静岡地方裁判所と支部

地方裁判所には、本庁のほかに複数の「支部」が設置されている場合があります。どの裁判所(本庁または支部)に管轄があるかについては、「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律」という法律によって、それぞれの市町村ごとに細かく定められています。

静岡地方裁判所と支部は、以下のとおりです。

管轄地域申立先所在地備考
静岡市、島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、御前崎市(御前崎・白羽・港)、榛原郡吉田町、榛原郡川根本町静岡地方裁判所(本庁)〒420-8633静岡県静岡市葵区追手町10-80
沼津市、御殿場市、裾野市、駿東郡清水町、駿東郡長泉町、駿東郡小山町、三島市、伊豆市、伊豆の国市、田方郡函南町、熱海市、伊東市静岡地方裁判所 沼津支部〒410-8550静岡県沼津市御幸町21-1
富士市、富士宮市静岡地方裁判所 富士支部〒417-8511静岡県富士市中央町2-7-1
下田市、賀茂郡東伊豆町、賀茂郡河津町、賀茂郡南伊豆町、賀茂郡松崎町、賀茂郡西伊豆町静岡地方裁判所 下田支部〒415-8520静岡県下田市4-7-34執行事件:・不動産競売 → 沼津支部・その他 → 下田支部
浜松市、磐田市、袋井市、湖西市静岡地方裁判所 浜松支部〒430-8520静岡県浜松市中央区中央1-12-5
掛川市、御前崎市(御前崎・白羽・港を除く)、菊川市、周智郡森町静岡地方裁判所 掛川支部〒436-0028静岡県掛川市亀の甲2-16-1執行事件:・不動産競売 → 浜松支部・その他 → 掛川支部

※遠方の加害者相手でも「静岡」で裁判ができる

加害者が県外など遠方に住んでいる場合でも、静岡県在住の被害者の方は、静岡県内の裁判所で裁判を起こすことが可能です。 前述の管轄ルールの通り、以下のいずれかのケースに該当すれば、静岡県の裁判所に管轄が認められます。

  • 被害者(あなた)が静岡県に住んでいる場合(義務履行地)
  • 交通事故が静岡県内で発生した場合(不法行為地)

したがって、加害者の住所地までわざわざ出向く必要はなく、ご自身の生活圏内で裁判手続きを進めることができます。

静岡で交通事故の民事裁判を起こした場合の流れと期間

実際に訴訟を提起してから、判決や和解に至るまでには、一定の流れと期間を要します。大まかな流れは以下の通りです。

①訴訟提起(提訴)

被害者が裁判所に「訴状」を提出することから裁判は始まります。

②口頭弁論期日(主張・反論の繰り返し)

訴訟が始まると、約1か月に1回のペースで裁判期日が開かれます。当事者双方は、期日に向けて主張を記載した書面(準備書面)や証拠を提出し、お互いの主張と反論を繰り返す中で、事件の争点を整理していきます。

③証拠調べ(尋問など)

争点が整理されると、事故の目撃者や当事者本人に質問をする「尋問」などの証拠調べ手続きが行われます。医師の診断書や領収書、事故現場の写真なども証拠として提出されます。

④判決または和解

全ての審理が終わると、裁判所が「判決」を下します。ただし、日本の民事裁判では、判決に至る前に「和解」で終了するケースが非常に多いのが実情です。和解はどの段階でも可能で、裁判官から和解案が提示されることもあります。裁判上の和解が成立すると、その内容は判決と同じ効力を持ちます。

【期間の目安】

訴訟を提起してから判決が下されるまでの期間はケースバイケースですが、平均すると1年程度かかることが多いとされています。

和解で解決する場合は、これより早期に紛争が解決する可能性があります。

弁護士基準(裁判基準)の持つ力

交通事故の損害賠償額の算定には、実は複数の基準が存在します。そして、裁判手続きにおいては、過去の判例の蓄積によって形成された、実務上の処理基準が用いられます。これが、いわゆる「弁護士基準(裁判基準)」と呼ばれるものです。

この基準に基づいて算出される賠償額は、加害者側の保険会社が示談交渉の初期段階で提示してくる金額(自社の独自基準)よりも高額になるのが一般的です。示談交渉で行き詰まったとしても、弁護士に依頼して裁判を起こすことで、この弁護士基準(裁判基準)に基づく正当な賠償額の獲得を目指せるという点が、裁判の大きなメリットの一つです。

なお、必ずしも裁判まで進まなくても、弁護士基準で賠償額を請求できる場合があります。示談交渉の段階であっても、弁護士が代理人として交渉することで、弁護士基準に基づいた損害額の計算・請求が可能になり、保険会社が増額に応じるケースも少なくありません。裁判を避けつつ適正な賠償を得られる可能性もあるため、早めに弁護士へ相談することが重要です。詳しくは、「交通事故被害を弁護士に相談・依頼するメリット」をご参照ください。

交通事故の裁判で失敗しないために【弁護士選びが結果を左右する】

交通事故の裁判を成功に導くためには、どの弁護士に依頼するかが極めて重要です。弁護士であれば誰でも良いというわけではなく、交通事故分野に関する専門知識と豊富な経験を持つ弁護士を選ぶことが、納得のいく結果を得るためには重要です。

交通事故に強い弁護士の選び方については、「交通事故後に弁護士選びで失敗しないために【まずは交通事故に強い弁護士に相談を】注力度合の見極め方」をご参照ください。

静岡県で交通事故の裁判をご検討されている方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。 当事務所では、交通事故被害に関するご相談は初回45分無料で承っております。まずはお気軽にお問い合わせいただき、今後の見通しや解決策について一緒に考えさせていただければ幸いです。

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