後遺障害等級で示談金はどれくらい違う?等級別慰謝料相場と失敗しない注意点【弁護士解説】

交通事故で後遺症が残った場合、「後遺障害等級」によって示談金や慰謝料の金額が大きく変わることをご存じでしょうか。等級が1つ違うだけで、受け取れる賠償金が数百万円、場合によっては数千万円単位で変動することもあります。

しかし、「自分の等級だといくらが相場なのか」「保険会社の提示額は妥当なのか」といった点が分からず、不安を抱えたまま示談を進めてしまう方も少なくありません。

この記事では、後遺障害等級が賠償金額に与える影響をわかりやすく解説するとともに、等級別の慰謝料・逸失利益の相場や、示談で損をしないために知っておくべき注意点を詳しくご紹介します。

1. 後遺障害等級は賠償金額を左右する「設計図」である

結論から言うと、後遺障害等級が1つ違うだけで、示談金・慰謝料は

100万円〜数百万円、重い後遺障害では数千万円以上変わることがあります。

交通事故でけがを負い、治療を続けても症状が残ってしまった場合、その賠償金額を大きく左右するのが「後遺障害等級」です。後遺障害等級は、交通事故の損害賠償における“設計図”ともいえる重要な役割を果たします。

建物を建てる際、設計図によって構造や規模が決まるように、後遺障害等級は、賠償金の「基礎となる金額」や「計算に用いる係数」を決定します。等級が1つ違うだけで、後遺障害慰謝料の基準額が変わり、逸失利益を算定する際の労働能力喪失率も変動します。

実際、後遺障害等級が認定されるかどうか、また、どの等級に認定されるかによって、最終的に受け取れる賠償金は数百万円、場合によっては数千万円単位で差が生じます。後遺障害等級は、交通事故の損害賠償において最も重要な要素の1つといえるでしょう。

認定の有無が「0か100か」を分ける

交通事故によって後遺症が残った場合でも、損害保険料率算出機構(自賠責保険の調査機関)による後遺障害等級の認定を受けられなければ、「非該当」と判断されます。

非該当となった場合、原則として後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった、後遺障害に関する賠償金は支払われません。

つまり、後遺障害等級が認定されるかどうかが、後遺障害に関する賠償金を受け取れるか否かを分ける、決定的な分岐点となるのです。

等級は全ての賠償項目の「係数」になる

後遺障害等級は、後遺障害慰謝料の金額を決めるだけでなく、さまざまな賠償項目を算定する際の「基礎」や「係数」として機能します。

具体的には、以下の損害賠償項目に直接影響します。

  • 後遺障害慰謝料:等級ごとに基準額が定められています。
  • 後遺障害逸失利益:等級ごとに定められた労働能力喪失率を用いて計算されます。
  • 将来介護費:主に1級・2級など、重度の後遺障害が残り、介護の必要性が認められる場合に請求できます。

このように、どの等級に認定されるかによって、賠償金全体の構造が決まることになります。

賠償金の種類や内訳について、詳しくはこちらもご覧ください。

2. 等級決定で「劇的に変わる」2つの主要な賠償金

後遺障害等級が認定されると、主に「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」という2つの大きな賠償項目が発生します。この2つが、賠償金額を大きく変動させる要因となります。

代表的な後遺障害等級について、慰謝料と労働能力喪失率を比較すると、次のとおりです。

代表的な後遺障害等級ごとの慰謝料・労働能力喪失率

等級慰謝料(弁護士基準)労働能力喪失率
14級110万円5%
12級290万円14%
9級690万円35%
5級1400万円79%
1級2800万円100%

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。金額は、認定された後遺障害等級に応じて定められています。

裁判実務で用いられる弁護士基準(裁判基準)では、最も軽い14級で110万円、最も重い1級で2,800万円と、等級ごとに明確な相場があります。等級が1つ異なるだけでも、慰謝料額は大きく変動します。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、「交通事故がなければ将来得られたはずの収入」に対する補償です。

これは、後遺障害によって労働能力がどの程度失われたかを示す労働能力喪失率を基に算定されます。労働能力喪失率は等級ごとに目安が定められており、例えば5級では79%、1級から3級では100%とされています。

喪失率が高くなるほど逸失利益の金額も大きくなり、被害者の年齢や収入によっては、数千万円単位の差が生じることもあります。

「自賠責基準」と「弁護士基準」の2つの基準による差(弁護士基準でなければ損をする理由)。

後遺障害の賠償金を計算する際には、主に2つの異なる基準が存在します。

  • 自賠責基準
    法律で定められた最低限の補償を行うための基準です。慰謝料額は弁護士基準に比べて大幅に低く設定されています。例えば、後遺障害慰謝料は14級で32万円、1級(介護不要の場合)で1,150万円です。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    過去の裁判例を基に作られた基準で、自賠責基準よりも高額です。弁護士が示談交渉や裁判を行う際には、この基準を用いて請求します。慰謝料は14級で110万円、1級で2,800万円が基準となります。

保険会社が最初に提示する金額は、自賠責基準か、それに近い独自の基準であることがほとんどです。適切な賠償金を得るためには、弁護士基準で請求することが不可欠です。

3. 【徹底比較】等級が「1つ」違うだけで賠償金はいくら変わるのか

後遺障害等級が1つ違うだけで、受け取れる賠償金の額は驚くほど変わります。ここでは具体的な例を挙げて、その差を見ていきましょう。

14級 vs 12級の壁

むちうちなどでよく問題となる神経症状の後遺障害では、14級と12級が大きな分かれ目となります。

14級9号「局部に神経症状を残すもの」

  • 自覚症状を医学的に説明できる程度の後遺障害
  • 弁護士基準の慰謝料:110万円

12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」

  • 画像所見などで他覚的に神経症状が証明できる後遺障害
  • 弁護士基準の慰謝料:290万円

この2つの等級では、慰謝料だけでも180万円の差があります。さらに、12級は14級よりも労働能力喪失率が高く設定される(14級:5%、12級:14%)ため、後遺障害逸失利益も加わると、その差は数百万円に達することも珍しくありません。

重度後遺障害(1〜5級)の場合

後遺障害等級1級や2級といった重度の後遺障害が残った場合、賠償金は極めて高額になります。

特に、常に介護が必要な状態(常時介護)と判断されると、自賠責保険だけでも支払限度額が4,000万円に設定されています。

弁護士基準で算定する場合、高額な後遺障害慰謝料(例:1級で2,800万円)や逸失利益(労働能力喪失率が79%〜100%)に加え、生涯にわたる将来介護費も請求できるため、賠償金の総額が1億円を超えるケースも少なくありません。

非該当と14級の差

後遺障害等級が認定されず「非該当」となった場合と、最も低い「14級」が認定された場合とでも、受け取れる金額には大きな差が生まれます。

非該当の場合、原則として後遺障害に対する賠償金はありません。

一方、14級が認定されれば、弁護士基準で請求すれば、後遺障害慰謝料110万円に加えて、後遺障害逸失利益も認められます。

このように、等級が認定されるかどうかで、手元に残る金額に少なくとも100万円以上の差が生じるのです。

4. 知っておくべき「逸失利益」の計算と年収・年齢の影響

後遺障害逸失利益は、被害者の状況によって金額が大きく変動する複雑な賠償項目です。その計算方法の基本を理解しておきましょう。

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益とは、前述の通り、後遺障害によって将来失われる収入を補償するものです。基本的な計算式は以下の通りです。

基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

この計算式を構成する3つの要素について、順に説明します。

  • 基礎収入
    事故前の被害者の年収を基本とします。給与所得者であれば源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書などから算出されます。
  • 労働能力喪失率
    後遺障害等級に応じて定められた、労働能力がどれだけ失われたかを示す割合です。例えば12級であれば14%、14級であれば5%といった基準が設けられています。
  • ライプニッツ係数とは
    将来にわたって得られるはずだった収入を前倒しで一括受取する際に、将来の利息分を割り引くための数値です。就労可能年数が長いほど、この係数は大きくなります。

なぜ若年者や高所得者は差が激しいのか

後遺障害逸失利益の金額は、被害者の年齢や収入によって大きく変動します。これは計算式の「基礎収入」と「ライプニッツ係数」が、年齢と収入に直接影響されるためです。

若年層は働ける期間(就労可能年数)が長いため、ライプニッツ係数が大きくなり、逸失利益は高額になります。

【具体例】同じ12級でも年齢で大きな差が

  • 25歳・年収400万円の場合
    400万円×14%(労働能力喪失率)×23.701(ライプニッツ係数)=約1,327万円
  • 60歳・年収400万円の場合
    400万円×14%×9.954(ライプニッツ係数)=約557万円

同じ等級、同じ年収でも、年齢の違いだけで約850万円もの差が生じます。

また、基礎収入が高ければ、それに比例して逸失利益も増加します。

【具体例】同じ12級でも年収で大きな差が

  • 35歳・年収400万円の場合
    400万円×14%×20.389(ライプニッツ係数)=約1,142万円
  • 35歳・年収800万円の場合
    800万円×14%×20.389=約2,283万円

年齢が同じでも、年収が2倍になれば逸失利益も約2倍になるのです。

主婦・学生・無職の場合

事故当時に収入がなかった主婦(主夫)、学生、無職の方でも、逸失利益が認められる場合があります。これは、将来的に収入を得る可能性があったと考えられるためです。

このような場合、原則として性別や年齢に応じた「平均賃金」を基礎収入として逸失利益が計算されます。特に学生や若年者の場合は、全年齢の平均賃金が基礎とされることもあり、収入がなかったからといって逸失利益を諦める必要はありません。

5. 示談金で損をしやすいケースと「等級認定」の落とし穴

適切な後遺障害等級の認定を受け、正当な賠償金を得るためには、いくつかの注意点があります。

診断書の不備

後遺障害等級の認定は、医師が作成する「後遺障害診断書」を最も重要な判断材料として行われます。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

医師は「治療のプロ」であっても「等級認定のプロ」ではありません。そのため、診断書の記載が不十分だったり、症状の程度が正確に伝わらない表現になっていたりすると、本来認定されるべき等級よりも低い等級になってしまったり、最悪の場合「非該当」となってしまうことがあるのです。

例えば、むちうちの神経症状では、単に「頚部痛あり」という記載だけでは不十分です。どの部位にどの程度の痛みやしびれがあるのか、可動域制限の程度はどうか、日常生活や仕事にどのような具体的な支障が出ているのかを詳細に記載してもらう必要があります。

また、MRIやレントゲンなどの画像所見がある場合は、その所見と自覚症状との医学的な関連性も明記してもらうことが極めて重要です。特に12級13号の「頑固な神経症状」の認定を目指す場合、画像所見による他覚的な証明が不可欠となります。

医師に診断書を作成してもらう際は、これらの点を具体的に伝え、できるだけ詳細な記載をお願いすることが大切です。

自賠責への任せきり(事前認定)のリスク

後遺障害等級の認定申請には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。

事前認定とは、加害者側の任意保険会社が手続きを代行してくれる方法です。一見便利に思えますが、この方法には注意すべき点があります。

事前認定では、どのような資料が提出されるのかを被害者側でコントロールできません。保険会社が必要最低限の資料のみを提出し、被害者に有利な追加の医証や意見書を積極的に集めることは期待できないのが実情です。

一方、被害者請求は、被害者自身(または依頼を受けた弁護士)が直接自賠責保険に申請する方法です。手間はかかりますが、有利な医証や意見書を自ら選んで提出できるため、より適正な等級認定を受けられる可能性が高まります。

示談のタイミング

交通事故の賠償問題で最も注意すべきことの1つが、示談のタイミングです。特に、「症状固定」の前に示談を成立させることは避けましょう。

「症状固定」とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断される状態を指します。後遺障害の有無や程度は、この症状固定の時点ではじめて確定します。

したがって、症状固定前に示談してしまうと、その後に後遺障害が判明しても、原則として追加の賠償請求はできません。保険会社から示談を急かされても、焦って応じないことが重要です。

後遺障害等級認定の手続きについては、こちらをご参照ください。

6. 弁護士が介入することで「土台」と「単価」が変わる

後遺障害等級に関する問題は、弁護士に依頼することで、被害者にとって有利な結果を得られる可能性が高まります。

弁護士は、賠償金の「土台」となる等級認定と、賠償額の「単価」となる算定基準の両面からサポートします。

「被害者請求」の活用

前述の通り、後遺障害等級の認定申請には「事前認定」と「被害者請求」があります。弁護士が介入する場合、ほとんどのケースで「被害者請求」の方法を選択します。

被害者請求では、弁護士が医療記録を精査し、必要に応じて主治医に追加の意見書を依頼したり、専門医の意見を取得したりすることができます。また、日常生活における支障を具体的に示す陳述書を作成したり、画像所見を詳しく分析した医学的意見書を添付したりすることで、認定の可能性を高めることができます。

こうした丁寧な証拠の積み上げによって、事前認定では「非該当」だったケースが14級に認定されたり、14級だったものが12級に認定されたりすることは、決して珍しくありません。

裁判基準への引き上げ

弁護士が介入する最大のメリットの1つは、賠償金の算定基準を「弁護士基準(裁判基準)」に引き上げられる点です。

前述の通り、保険会社が提示する「自賠責基準」と「弁護士基準」には大きな隔たりがあります。

例えば、後遺障害慰謝料14級の場合、自賠責基準では32万円ですが、弁護士基準では110万円となり、3倍以上の差があります。

1級の場合でも、自賠責基準1,150万円に対し、弁護士基準は2,800万円と2倍以上です。弁護士は、この正当な基準に基づいて保険会社と交渉し、賠償金の増額を目指します。

弁護士に依頼するメリットについて、詳しくはこちらで解説しています。

等級が確定した後の示談交渉も非常に重要です。詳しくは示談交渉の内容についてのページをご覧ください。

7. まとめ|後遺障害等級は賠償金額を決める「設計図」

この記事で解説してきたように、後遺障害等級は交通事故の賠償金額を決定する上で最も重要な「設計図」です。

示談交渉のテクニックも重要ですが、それ以前にどの後遺障害等級が認定されるかが賠償金の土台を決めます。適正な等級が認定されなければ、どれだけ巧みに交渉しても得られる金額には限界があります。逆に言えば、適切な等級さえ認定されれば、賠償金額は自ずと適正な水準に近づくのです。

後遺障害等級の認定は、一度結果が出てしまうと覆すことが極めて困難です。適切な等級認定を受けられないと、本来得られるはずだった正当な補償を永久に失うことになりかねません。だからこそ、最初の申請段階で十分な準備をすることが何より重要です。

後遺障害等級の申請準備や認定結果に少しでも不安や疑問があれば、取り返しのつかない事態になる前に、交通事故に詳しい弁護士へ相談することを強くおすすめします。後遺障害等級は一度決まってしまうと後から取り返すことが難しいからこそ、早い段階での専門家のアドバイスが大きな意味を持ちます。

当事務所では、後遺障害等級認定から示談交渉まで、交通事故に精通した弁護士が一貫してサポートしています。初回45分は無料ですので、お一人で悩まずお気軽にご相談ください。

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