弁護士費用特約について

交通事故に遭った際、意外と知られていないのが「弁護士費用特約」の存在です。保険に付帯されていることが多く、活用すれば弁護士への相談・依頼にかかる費用負担を大きく軽減できます。しかし、多くの人が「よく分からない」「なんとなく面倒そう」と感じて利用せず、損をしているのが現実です。

この記事では、弁護士費用特約の基本的な仕組みから、使うメリット、実際の利用ステップ、よくある疑問までを分かりやすく解説します。

弁護士費用特約とは?知っておきたい基本の仕組み

弁護士費用特約とは、交通事故などに巻き込まれた際に、弁護士へ相談・依頼するための費用を保険会社が負担してくれる制度です。自動車保険のオプション契約としてよく見られますが、最近では「弁護士保険」として単独で販売されているケースもあります。

例えば、交通事故の被害に遭って損害賠償を請求したい場合、相手との交渉は非常に複雑です。弁護士に依頼したくても「費用が不安で踏み出せない」という人も少なくありません。そんなとき、この特約があれば、相談料や着手金、報酬金などを保険会社がカバーしてくれるため、費用の心配なく弁護士に依頼できます。

ただし、特約は自動的に付帯されているわけではありません。加入の有無を確認していないまま、弁護士への相談をあきらめてしまうケースもあります。まずは、現在の保険契約をしっかり確認することが重要です。

弁護士費用特約を「使わない」のは損?弁護士費用特約使用のメリット

弁護士費用特約のメリットは、主に以下の3つです。

費用負担を大幅に軽減できる

弁護士に依頼すると、相談料・着手金・報酬金などさまざまな費用が発生します。これらは高額になりがちで、依頼をためらう大きな要因です。

しかし、弁護士費用特約があれば、一般的に最大300万円までの費用を保険で補償してもらえます。自己負担を気にせずに弁護士に依頼できる点は、非常に大きな安心材料です。

不利な交渉を避けやすくなる

相手保険会社との示談交渉などを自分で行うのは、リスクが大きいものです。法律知識や交渉力に差がある場合、不利な条件を飲まされてしまう可能性も。

弁護士を早期に介入させることで、適切な主張や交渉が可能になり、不利益を未然に防ぐことにつながります。

保険料への影響がない

「特約を使うと、保険料が上がるのでは?」と心配する人もいますが、弁護士費用特約は「ノーカウント事故」として扱われます。つまり、等級に影響せず、翌年の保険料も変わりません。

弁護士費用特約の利用に関するよくある質問

ここでは、弁護士費用特約のご利用にあたって、よくいただくご質問に分かりやすくお答えします。

特約の上限金額を超える場合はどうなるのか?

弁護士費用特約には、1人あたり最大300万円までという上限があります。これを超えた場合は、原則として超過分が自己負担になります。

とはいえ、実際に300万円を超えるケースはまれで、多くの場合、費用は補償内に収まります。交通事故においては、実質的な自己負担がゼロに近いことがほとんどです。

家族の保険も使えるのか?

特約は契約者本人だけでなく、一定条件を満たす家族や同乗者などにも適用される可能性があります。特に、自分が加入していなくても、家族が加入している保険に特約があれば、それを利用できる場合もあります。

ただし、適用範囲は保険会社によって異なるため、詳細は保険証券や約款で確認しましょう。思わぬところで「使える保険」が見つかることもあります。

弁護士費用特約利用のステップ

弁護士費用特約は、加入しているだけでは意味がありません。実際に使うには、次のステップを踏む必要があります。

① 特約の有無を確認する

まずは、自分の保険に弁護士費用特約が付帯されているかを確認しましょう。自動車保険だけでなく、火災保険やクレジットカードに付いていることもあります。

また、補償の対象者には、契約者本人だけでなく、以下のようなケースも含まれる可能性があります。

  • 配偶者(事実婚・内縁を含む)
  • 同居の親族
  • 別居している未婚の子
  • 契約車両に同乗していた人
  • 車の所有者(契約者や配偶者以外)

保険証券や約款を確認するか、不明な場合は保険会社か弁護士に相談するのがおすすめです。

② 交通事故に強い弁護士を探す

特約の利用が可能であると確認できたら、次は弁護士選びです。交通事故分野は専門性が高く、保険・医療の知識も必要です。過去の取り扱い実績や得意分野を確認して、信頼できる弁護士を選びましょう。

③ 保険会社に特約を利用する旨を連絡する

依頼する弁護士が決まったら、保険会社に「弁護士費用特約を利用したい」と連絡し、弁護士の情報も伝えます。費用に関する手続きは、保険会社と弁護士が直接やり取りするのが一般的なので、依頼者の手間はほとんどありません。

④ 弁護士と委任契約を結ぶ

次に、弁護士との委任契約を締結します。対応内容や費用についての説明を受け、納得した上で契約しましょう。保険会社への連絡前に契約しても問題はありません。

⑤ 弁護士費用の支払いは保険会社が対応

契約が成立すると、保険会社から弁護士に着手金などが支払われます。事件解決後には、成果に応じて報酬金も支払われます。これらの費用は、補償範囲内であれば依頼者が直接負担することはありません。

まとめ|弁護士費用特約を上手に活用しましょう

交通事故に遭ったとき、弁護士に依頼することで適正な賠償や安心した対応が可能になります。しかし、費用の不安から相談をためらう方も少なくありません。そんなときに役立つのが「弁護士費用特約」です。

この特約を利用すれば、最大300万円程度までの弁護士費用を保険でまかなえるため、自己負担を気にせず専門家に依頼できます。しかも保険料や等級には影響せず、契約者本人だけでなく家族や同乗者も対象になる場合があります。

加入しているのに使わないのは大きな損失です。まずは自分や家族の保険に特約が付いているか確認し、いざというときには積極的に活用しましょう。

この記事の監修者プロフィール

弁護士 林 克樹(はやし かつき)
林総合法律事務所 代表弁護士
(静岡県弁護士会所属)
被害者側の交通事故案件を中心に、年間約100件の損害賠償請求を手掛ける。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加を含む)や、後遺障害等級認定の獲得、保険会社との示談交渉など、被害者の正当な権利を実現するための対応に注力している。
経歴

埼玉県出身。
上智大学経済学部卒業。
静岡大学大学院法務研究科修了。

保有資格

弁護士(静岡県弁護士会所属:登録番号49112)、税理士、社会保険労務士

menu