死亡事故/交通事故の怪我・症状別解説

交通事故による死亡事故は、ご遺族に深刻な精神的苦痛と経済的負担をもたらします。突然の出来事の中で、警察・保険会社への対応や葬儀、相続など、多くの手続きを短期間で行わなければならず、冷静な判断は容易ではありません。

本記事では、交通死亡事故における損害賠償の種類と金額の目安、さらに弁護士が果たす役割について、わかりやすく解説します。

死亡事故に遭われたご遺族の方へ

突然の交通事故で大切なご家族を失われた皆さまに、心よりお悔やみ申し上げます。

死亡事故は深い悲しみの中で、警察への対応、保険会社とのやり取り、葬儀や役所への届出、相続など多くの現実的な負担を伴います。さらに、生活費や葬儀費用といった経済的な問題も重くのしかかります。

自賠責保険の仮渡金制度を利用すれば、一定額を先に受け取り、当面の生活費や葬儀費用に充てることが可能です。ただし、刑事手続や損害賠償の内容は一度決まると後から修正できないことも多く、できる限り正確な情報を得て慎重に行動することが大切です。

死亡事故の賠償請求で弁護士が担う役割

ここでは、ご遺族の皆さまが少しでも早く落ち着きを取り戻し、複雑な手続きや交渉から解放されるよう、弁護士がお手伝いできる内容をわかりやすくまとめました。

① 証拠収集と事故状況の検証

死亡事故では被害者本人の証言が得られないため、加害者側の供述や警察の捜査記録に基づいて過失割合が決まる傾向があります。弁護士は実況見分調書、防犯カメラ映像、目撃証言、医療記録などを集め、被害者に不利な認定がなされないよう証拠を精査します。

② 適正な損害賠償額の算定

死亡事故では、葬儀費用や逸失利益、慰謝料、近親者固有の慰謝料など多くの項目を請求できます。弁護士が裁判例や算定基準に沿って適正額を計算し、増額交渉を行います。

③ 示談交渉・訴訟の代理

加害者側保険会社とのやり取りや示談交渉は、精神的にも時間的にも大きな負担となります。弁護士が代理人として交渉にあたることで、ご遺族は相手と直接やり取りする必要がなくなり、適正な賠償額での示談成立を目指せます。交渉がまとまらない場合は、民事裁判での請求も弁護士が対応します。

④ 自賠責保険請求・仮渡金申請のサポート

葬儀費用や生活費のために早期の金銭補償が必要な場合、自賠責保険の仮渡金制度や被害者請求を利用できます。弁護士は必要書類を整え、スムーズな申請をサポートします。

⑤ 刑事手続・被害者参加制度の対応

加害者が起訴され刑事裁判となった場合、被害者参加制度を利用することでご遺族が裁判に関与し、意見陳述や被告人質問が可能になります。弁護士は参加申出や質問事項の作成、期日調整などを行い、ご遺族の意思が適切に裁判に反映されるよう支援します。

このほかにも、弁護士に依頼することで多くのメリットが得られます。詳しくは

弁護士に依頼するメリットをご覧ください。

交通死亡事故で請求できる損害賠償の種類と可能性のある賠償金額

交通死亡事故が発生した場合、ご遺族は加害者に対して損害賠償を請求することができます。

対象となる損害は主に次の3つに分類されます。

① 積極損害(実際にかかった費用)

事故によって現実に発生した出費を補う賠償です。

治療費・入院費・付添費

  • 治療費・入院費:実費
  • 入院雑費:1日あたり約1,500円
  • 付添費:職業付添人:実費/近親者:1日4,200円~6,500円

葬儀費用

一般的な範囲:80万円〜150万円程度

香典返しや墓地代は含まれません

② 消極損害(将来得られたはずの利益)

事故がなければ将来得られていたはずの収入や利益を補償するものです。

死亡逸失利益

目安:数百万円〜数千万円

被害者の年収・年齢・家族構成などによって大きく異なります。

③ 慰謝料(精神的損害)

被害者本人や遺族の精神的苦痛に対する賠償です。

慰謝料の目安

被害者の立場慰謝料相場の例
一家の大黒柱2,000万円〜3,000万円程度
配偶者・母親1,500万円〜2,500万円程度
子ども・高齢者1,000万円〜2,500万円程度

賠償金が減額されることもある

以下の場合には、賠償金が減額される恐れがあります。

過失相殺

被害者にも過失があると判断された場合、その分だけ賠償金が減額されます。

損益相殺

既に受け取った公的給付(例:遺族年金、保険金の一部など)がある場合、それが差し引かれることがあります。

生命保険金や香典などは控除されません。

このように、交通死亡事故による損害賠償は、実際にかかった費用・将来的な収入の補償・精神的な慰謝料と、広範囲にわたります。金額は数百万円から数千万円と大きく、被害者の状況によって大きく変動します。

また、すでに受け取った給付金などが差し引かれるケースもあるため、損害賠償の全体像を正しく理解し、冷静に対応することが大切です。

まとめ|ご遺族の負担を減らし、公正な補償を得るために

交通死亡事故は、精神的にも経済的にもご遺族に大きな影響を与えます。損害賠償は数百万円から数千万円に及び、適正な額を受け取るためには正確な証拠収集と的確な交渉が欠かせません。

ご遺族が抱える負担を少しでも軽減し、公正な補償を得るためには、専門知識を持つ弁護士に早い段階で相談することが重要です。冷静に対応することが難しい状況だからこそ、弁護士の支援を得て、生活の再建に向けた一歩を踏み出しましょう。

この記事の監修者プロフィール

弁護士 林 克樹(はやし かつき)
林総合法律事務所 代表弁護士
(静岡県弁護士会所属)
被害者側の交通事故案件を中心に、年間約100件の損害賠償請求を手掛ける。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加を含む)や、後遺障害等級認定の獲得、保険会社との示談交渉など、被害者の正当な権利を実現するための対応に注力している。
経歴

埼玉県出身。
上智大学経済学部卒業。
静岡大学大学院法務研究科修了。

保有資格

弁護士(静岡県弁護士会所属:登録番号49112)、税理士、社会保険労務士

menu