法人・会社破産の一般的な流れ

企業経営が行き詰まり、法人として破産を検討する必要に迫られたとき、どのような流れで手続が進むのかを理解しておくことは極めて重要です。

法人破産には、弁護士への相談、申立ての準備、裁判所での手続、破産管財人による対応など、いくつものステップがあり、それぞれの段階で必要な対応や判断が求められます。

本記事では、法人・会社破産の一般的な流れを時系列でわかりやすく解説し、経営者が知っておくべき注意点や実務上のポイントもあわせて紹介します。破産に伴う混乱やトラブルを最小限に抑えるために、ぜひ参考にしてください。

弁護士への相談から破産申立てまでの流れ

法人破産に至るまでには、会社の財産状況や債務の把握、従業員や取引先への対応、必要書類の準備など、いくつもの重要なステップがあります。

ここでは、破産申立てに至るまでの一連の流れについて、主な対応事項を整理して解説します。

1. 弁護士への相談

会社の資金繰りが厳しくなり、事業継続が困難になった場合、最初にすべきことは専門家への相談です。破産以外にも民事再生や私的整理といった選択肢があるため、弁護士は会社の財務状況や事業の実情に応じて最適な手続きを提案します。

中小企業の経営者の中には「もう少し頑張れば……」と状況を先延ばしにする方も少なくありませんが、タイミングを誤ると状況が悪化し、債権者や従業員への影響が拡大します。早めの相談が被害の最小化につながります。

2. 破産申立て時期の検討

弁護士との面談後、すぐに破産手続に進むとは限りません。資金繰りのタイミング、従業員の解雇手続き、事務所の明渡しなどを踏まえて、最適な申立て時期を弁護士と調整します。特に「資産隠し」や「偏頗弁済(特定の債権者への優先支払い)」と誤解される行為を避けるためにも、計画的なスケジュール設計が必要です。

3. 会社の整理と資料準備

申立てには、財産目録、債権者一覧、賃貸借契約、決算書、取引履歴など多くの資料が必要となるため、早い段階からの準備が重要です。並行して、不要資産の処分や事務所の明渡し、従業員の解雇とその説明、退職手続(源泉徴収票や雇用保険の手続など)も進めます。

また、破産申立てには社内での正式な機関決議(取締役会決議など)を経て、議事録を作成する必要があります。

4. 弁護士との契約と費用の準備

破産方針が決定したら、弁護士と正式に委任契約を締結します。この時点で、破産手続にかかる弁護士費用と、裁判所へ納付する予納金を準備する必要があります。弁護士費用や予納金を契約時に用意できない場合、分割払いや、売掛金を回収する方法により、後日調達する場合もあります。

5. 債権者への受任通知(必要に応じて)

多くの場合、弁護士から債権者に「受任通知」を送付します。これにより、取立てや連絡の窓口が弁護士に一本化され、経営者は直接対応せずに済むようになります。ただし、取引先との関係や混乱の可能性がある場合は通知を控えることもあります。

6. 裁判所への破産申立て

必要な資料が整い、費用の準備ができたら、いよいよ裁判所への破産申立てを行います。申立書には、会社の基本情報、債務・資産の詳細、取引履歴などを記載し、証拠資料とともに提出します。

申立て後、裁判所で破産の要件を審査する手続きが進行します。なお、申立て手続きは弁護士が代理で行うため、経営者本人が出廷する必要は基本的にありません。

破産申立て後の流れ

裁判所への申立てが完了した後は、破産手続開始決定、破産管財人の選任、資産整理、債権者集会などを経て、法人格の消滅に至るまでの清算処理が進んでいきます。ここでは、申立て後の主な流れを紹介します。

1. 裁判所による破産手続開始決定・破産管財人の選任

裁判所は申立内容を審査し、要件を満たすと判断されれば「破産手続開始決定」を出します。同時に、裁判所が選任する破産管財人(通常は第三者の弁護士)が手続を引き継ぎ、以降の財産管理・換価などを担当します。

破産開始決定以降は、会社の財産は全て管財人の管理下に置かれ、代表者や従業員が財産を動かすことはできません。

2. 破産管財人との面談・引継ぎ

開始決定後、速やかに破産管財人と会社代表者・申立代理人弁護士との間で面談が行われます。ここで事業や財産の詳細説明、書類提出などの指示が出され、今後の手続方針が確認されます。

破産管財人の求めに応じて、随時追加書類の提出や説明対応が求められる場合があります。

3. 財産の換価・債権調査

破産管財人は、不動産・機械・在庫など会社の財産を売却して現金化(換価)し、債権者への配当原資とします。同時に、債権届出の内容を精査し、妥当な債権額かどうかの調査(債権調査)も行います。

不正な取引や資産の隠匿が認められた場合には、「否認権」により取消し・返還請求がなされることもあります。

4. 債権者集会の開催

通常は、開始決定から3か月前後で「債権者集会(財産状況報告集会)」が裁判所で開催されます。破産管財人が手続の進行状況や今後の方針を報告し、代表者の出席も必要です。

手続の複雑さや債権者数によっては、集会が複数回に分けて行われる場合もあります。

5. 配当

換価により得た資金がある場合は、債権者に対して配当が行われます。税金・社会保険料・従業員の給与債権などは優先順位が高く、法律に従って配分されます。なお、会社の代表者はこの配当手続には基本的に関与しません。

6. 破産手続の終結

すべての処理が完了すると、裁判所が「破産手続終結決定」を出して法人格が消滅し、会社は正式に清算・終了となります。配当すべき財産がないと判断された場合には、手続が簡略化され「異時廃止」で終了することもあります。

法人・会社破産手続にかかる期間

法人の破産手続は、準備から終了までに相応の時間がかかります。裁判所への申立て後は、管財人の選任、債権者集会などの手続を経て進行し、一般的には6か月~1年ほどの期間を要します。ただし、事件の内容や資産状況によっては早期に終了するケースもあるため、見通しを持って進めることが重要です。

破産申立てから終了までの目安は6か月〜1年程度

法人破産は、申立てから終結までおおむね6か月から1年程度が一般的な期間です。破産手続では、破産管財人の選任後、約3か月ごとに債権者集会が開催されるのが通常で、2〜3回の集会を経て終了となることが多いです。

ただし、債権者間の争いや財産が多く換価処理が長引くような複雑な事案では、1年以上かかることもあります。

手続終了が早まる条件とは

会社の財産がほとんど残っていない、利害関係者が少ない、または違法行為などの特別な事情がない場合には、比較的短期間で手続が完了する可能性があります。

このような単純な事件は、「少額管財事件」として扱われることがあり、3〜6か月ほどで終了するケースもあります。

「通常管財事件」と「少額管財事件」の違い

法人破産では、管財事件の内容に応じて「通常管財事件」と「少額管財事件」に分類されます。通常管財事件は、資産がある程度あり、債権者が多い場合などに適用され、期間も費用も大きくなります。

一方、少額管財事件では、資産がほとんどなく、債権者も少数で利害関係が単純なため、破産管財人による処理も簡潔で済み、手続が迅速に進む傾向があります。

申立て前の準備期間も含めたスケジュール感が大切

破産申立てに先立ち、必要書類の収集や従業員・取引先への対応など、1~3か月程度の準備期間が必要です。このため、法人破産の全体スケジュールとしては、申立て準備も含めて「最短で4~6か月、平均で9か月~1年超」となる可能性がある点に注意が必要です。

破産手続が進んでいる間の会社の代表者の動向

法人の破産手続が開始された後も、会社の代表者には一定の義務と行動制限が課されます。破産管財人への誠実な協力や債権者集会への出席は法的に求められるだけでなく、居住地の移動や長期の外出にも裁判所の許可が必要です。こうした義務を怠ると、仮に代表者個人が同時に破産申立てをしている場合、免責不許可という重大な結果を招く可能性もあるため、十分な注意が必要です。

正確な情報開示と誠実な対応が基本

会社の破産手続が開始されると、裁判所により破産管財人が選任され、会社の財産・負債・過去の取引履歴などの調査が行われます。会社の代表者は、この調査に対して誠実かつ正確に対応し、破産管財人に必要な情報を開示する義務があります。

虚偽の説明や重要な情報の隠蔽は、破産手続の妨げになるばかりでなく、管財人による資産換価・債権者配当に支障を及ぼします。会社財産の隠匿・不正譲渡・帳簿の改ざんといった行為は、破産法違反として処罰の対象となるおそれもあります。

こうしたリスクを避けるためにも、社長は破産申立代理人や破産管財人の指示に従い、情報開示義務を誠実に果たすことが必要です。

引っ越し・旅行には裁判所の許可が必要

破産手続中、会社の代表者は裁判所の許可なく居住地を離れることが制限されます(破産法第37条・第39条)。これは、破産管財人や裁判所が必要なタイミングで代表者に連絡を取れるよう、常に所在を明確にしておく必要があるためです。

「居住地を離れる」には、転居だけでなく、出張・旅行、特に数日以上にわたる外出も含まれます。無断で長期の旅行や引っ越しを行えば、裁判所の心証を害するだけでなく、代表者個人が破産を申立てている場合には免責不許可の理由となるリスクも生じます。

外出や転居の予定がある場合には必ず申立代理人や破産管財人を通じて裁判所の許可を得るようにしましょう。

債権者集会には必ず出席を

法人破産の手続では、通常3か月に1回程度の頻度で「債権者集会」が開催されます。会社の代表者はこれらの集会にすべて出席する義務があります。

債権者集会では、破産管財人から財産の換価状況・債権の調査結果・配当方針などが報告されるため、代表者にも確認や説明が求められる場面があります。正当な理由なく出席を怠った場合、裁判所や管財人から「非協力的」とみなされ、手続全体に悪影響が生じる可能性があります。

特に、代表者が個人としても破産を申立てている場合には、債権者集会の無断欠席が個人の破産における免責不許可の判断要素となることがあるため、極めて重要な義務といえます。

体調不良などやむを得ない事情がある場合は、必ず事前に申立代理人や破産管財人に相談のうえ、裁判所の許可を得るようにしましょう。

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