事業再生とは、事業継続を弁護士に依頼するメリット

業績の悪化や資金繰りの行き詰まりを前に、「このまま事業を続けられるのか」と不安を抱える経営者は少なくありません。とはいえ、必ずしもすぐに「破産」や「廃業」が最善の選択肢とは限らず、適切な手段を講じることで事業を再生し、立て直すことは十分に可能です。

本記事では、「事業再生とは何か」を基本から丁寧に解説するとともに、私的整理・法的整理・事業譲渡などの主要な再建手法を紹介します。さらに、こうした重要な局面において弁護士に相談することで得られるメリットについても詳しく取り上げ、経営再建の一歩を踏み出すために必要な視点をお伝えします。

事業再生とは

事業再生とは、経営不振に陥った企業が、破産や清算に至る前に経営基盤を立て直し、事業の継続を図るための取り組みをいいます。単なる資金繰りの改善ではなく、財務・事業・組織の各面において抜本的な改革を行い、再び健全な経営状態に戻すことを目的としています。

経営者の中には、売上の減少や支払の遅延が続くと、すぐに「倒産」や「廃業」という言葉を意識してしまう方も少なくありません。しかし、すべての企業が即座に破産手続を取る必要があるわけではなく、一定の条件を満たせば、事業を継続しながら債務整理を行うことも可能です。

事業再生には、以下のような利点があります。

  • 企業としての社会的信用や取引先との関係を維持できる
  • 従業員の雇用を守ることができる
  • 経営者個人の連帯保証や私財への影響を抑える余地がある

これらの観点からも、資金繰りに窮したからといってすぐに破産を選択するのではなく、まずは「再生の可能性」を探ることが重要です。

特に、中小企業や個人事業主の場合には、事業そのものが経営者の人生と直結しているケースも多く、事業を継続できる選択肢があるなら、それを最大限に活かすべきでしょう。

ただし、事業再生が有効な手段となるかどうかは、財務状況・負債の内容・取引関係・再建可能性など多くの要素を慎重に見極める必要があります。判断を誤ると、かえって債務が膨らんだり、再建の機会を逸するおそれもあるため、早期に専門家へ相談することが極めて重要です。

事業再生が可能かどうかの判断

「負債を整理すれば本当に事業の立て直しができるのか」と、不安に思う経営者は少なくありません。たしかに、すべての企業が事業再生に成功するとは限らず、市場環境や事業の競争力によっては、むしろ会社の清算を検討すべき場合もあります。

そこで、事業再生が現実的かどうかを判断する際の代表的な5つのポイントをご紹介します。

採算の取れる事業が残っているか

継続的に利益を生み出せる事業部門があるかどうかは、事業再生を考える上での重要な基準です。一部でも黒字事業が存在すれば、そこに経営資源を集中させて立て直せる可能性が出てきます。すべての事業が赤字の場合は、いくら負債を整理しても根本的な再建にはつながりません。

金融機関との関係が維持されているか

金融機関からの協力を得られるかどうかも大きな要素です。返済条件の見直しや元本猶予といった支援を引き出すためには、メインバンクとの信頼関係や、債務の性質を踏まえた交渉が求められます。債権者が複数に分かれている場合は、調整の難易度がさらに高くなります。

スポンサーや支援者の見込みがあるか

事業譲渡や会社分割などの手法を使う場合、外部からの資金提供や引受を担うスポンサーの存在が不可欠です。親族や知人の支援に加え、公的機関やファンドなども候補となり得ます。必要に応じて、複数の支援策を検討することが現実的です。

顧客・取引先・従業員の理解が得られるか

事業再生には、企業を取り巻くステークホルダーの協力が欠かせません。債務整理や事業縮小の過程で、顧客の信用を失ったり、取引先が撤退したりすれば、再建は一気に困難になります。従業員との信頼関係を保ち、混乱を防ぐための丁寧な説明と対応が重要です。

経営者自身の意志と実行力があるか

制度や支援の仕組みが整っていても、それを活用して再生に導くのは経営者自身の力です。再建に向けての判断と行動、関係者への説明、時には痛みを伴う決断も求められます。再生をあきらめず、具体的な行動に踏み出せるかどうかが、事業の未来を左右します。

私的整理による事業再生

私的整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉を行い、債務の減額や返済猶予などの合意を目指す方法です。事業を存続させながら債務負担を軽減したい企業にとって、柔軟性の高い再建手段として活用されています。

私的整理には、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは、弁護士を通じて主要債権者と個別に交渉を進める任意交渉型。もうひとつは、中小企業再生支援協議会や事業再生ADRなど、第三者機関のルールに基づいて債権者全体と交渉を行う準則型私的整理です。

この手続きの特徴は、当事者同士の合意によって柔軟な条件調整ができる点にあります。特定の債権だけを対象にしたり、保証人に迷惑をかけないよう配慮した債務整理を行うことも可能です。また、裁判所の関与がない分、スピード感をもって対応できるのも利点といえます。

一方で、債権者全員の同意が得られなければ手続き自体が成立しないリスクがあります。特に、主要な金融機関の理解と協力が得られない場合、実質的な再建は困難になります。そのため、交渉の戦略や再生計画の内容に十分な準備が求められます。

法的整理による事業再生

法的整理とは、裁判所の監督下で行われる再建型の債務整理手続きです。主に「民事再生」や「会社更生」といった手続きがこれに該当し、企業の法人格を維持しながら債務負担を整理し、経営の立て直しを図ることができます。

法的整理の特徴は、一定の法的枠組みに基づいて債務整理を強制的に進められる点にあります。たとえば、再建計画に賛成しない債権者がいても、法定の賛成要件を満たせば手続きを進めることが可能です。また、返済猶予や債権カットなどを再建計画に盛り込むことができ、企業のキャッシュフロー改善にもつながります。

民事再生は中小企業にも広く利用されており、経営者が引き続き経営に関与できる点が魅力です。会社更生は、主に大企業や金融債務が大きい企業で用いられ、より厳格な管理体制が敷かれます。

ただし、法的整理は私的整理と比べて手続きが複雑で時間もかかりがちです。また、債権者全員が手続きに巻き込まれるため、事業継続に支障が出る場合や、企業イメージに影響が及ぶこともあります。適切なタイミングと実行力をもって臨むことが重要です。

事業譲渡と破産を組み合わせて事業を継続する方法

私的整理や法的整理を通じて再建を図ることが難しい場合でも、事業の中に価値ある部分が残っていれば、それを活かして再スタートを切る方法があります。そこで選択肢となるのが、「事業譲渡」と「破産手続き」を組み合わせるスキームです。

この方法は、旧会社の営業資産や人材、顧客基盤などを新会社へ譲渡し、旧会社はその後に破産手続きを行うというものです。譲渡された事業は、新たな法人(スポンサー企業や経営者親族など)によって引き継がれるため、事業そのものの継続が可能になります。

この手法は、大企業だけでなく、固定資産の少ない中小企業や個人事業主にとっても現実的な再建手段です。たとえば、店舗ビジネスや小規模製造業、サービス業のように、資産の大半が動産やノウハウ、顧客にあるような業態では特に有効です。

  • 不動産や高額設備が少ないため譲渡価格を抑えやすい
  • 仕入れが現金決済中心なら、旧会社の支払停止が新会社の取引に影響しにくい
  • 古いリース物件であれば、リース契約の再承認が得やすい

こうした条件が整っていれば、譲渡の際の障害も少なく、事業の再出発がスムーズになります。

ただし、この方法には破産法上の注意点があります。破産手続きの直前に事業譲渡を行う場合、破産管財人が「不当な財産処分」と判断すれば、譲渡契約そのものが無効(否認)とされるリスクがあるのです。

次のような点をクリアしておくことが、リスク回避のために重要です。

  • 譲渡価格が不当に安くないか(資産評価に基づいた適正価格であるか)
  • 新会社の資金が旧会社やその代表者から出ていないか
  • 新旧会社の資産・資金の流れが混同されていないか
  • 売掛金など旧会社の資産が新会社に流れていないか
  • 新会社の代表者が親族であっても、独立した事業体として機能しているか

たとえば、新会社が旧会社の事業を引き継ぐ一方で、その代金が旧会社からの資金で支払われていた場合、債権者への配当を逃れる意図があったとみなされ、管財人から否認される可能性が高くなります。そのため、事業譲渡を検討している場合には、破産申立ての直前ではなく、準備段階から弁護士と協議し、譲渡条件や実務フローを精査することが極めて重要です。

このように、事業譲渡と破産手続きを併用することで、債務の清算と事業の再スタートを両立させることが可能になります。ただし、法的なリスクや利害関係人への説明責任が伴うため、安易な判断は禁物です。再建スキームの選定・実行は、弁護士の助言を得ながら慎重に進めることをおすすめします。

事業再生を弁護士に相談したほうがよい理由(メリット)

事業の継続に限界を感じ始めたとき、経営者は深い葛藤や不安を抱えながら決断を迫られます。そうした局面では、的確な判断と迅速な対応が求められますが、限られた時間の中で最適な道を選ぶのは容易ではありません。

そこで重要になるのが、事業再生に精通した弁護士のサポートです。専門的な視点から現状を冷静に分析し、状況に応じた最善の手段を見極めることで、再建の可能性が現実的な選択肢となります。

ここでは、事業再生において弁護士に相談するメリットを4つの観点からご紹介します。

再生の可能性を客観的に判断してもらえる

会社のことを最も深く理解しているのは経営者自身ですが、その反面、感情や願望が先行してしまい、事業再生の可否を冷静に見極めるのは容易ではありません。

弁護士は、財務状況や事業の実態を客観的に把握した上で、再生が現実的かどうかを専門的に評価できます。再建が困難と判断される場合も、適切な破産や清算の手続きに円滑に移行する支援が可能です。

会社に合った最適な再生手法を選択できる

事業再生には、私的整理、法的整理、事業譲渡の活用など、さまざまな手段が存在します。自社の規模や債務構造、ステークホルダーの関係性などに応じて、最適な方法を選ぶことが成功のカギとなります。

弁護士はそれぞれの手法に精通しており、企業の現状を分析した上で、最も効果的かつ実行可能な方法を提案することができます。

金融機関との交渉を代理してもらえる

私的整理を含む再建過程では、金融機関との交渉が不可避です。返済条件の変更や債務免除を求めるには、計画性と説得力のある説明が必要であり、経営者が単独で対応するのは精神的にも実務的にも大きな負担となります。

弁護士は、代理人として交渉の前面に立ち、法律的根拠に基づいた合理的な提案を行い、より有利な条件での再建を目指すことが可能です。

実現可能な再建案の作成支援が受けられる

債権者や関係者の理解と協力を得るためには、現実的で説得力のある再建案の提示が不可欠です。

弁護士は、事業の構造や資金繰りの見通しを分析し、実現性の高い再建スキームを設計することができます。特に第三者の視点で練られた再建案は、債権者との交渉材料としても大きな力を発揮します。

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