子どもの交通事故で請求できる賠償金とは?慰謝料・逸失利益・後遺障害を静岡の弁護士が解説

お子さんが交通事故に遭ったとき、相手側に請求できるお金には、治療費や慰謝料のほか、将来失われる収入を補う「逸失利益(いっしつりえき)」などがあります。

子どもの事故は大人と違い、本人がうまく症状を伝えられなかったり、まだ就労前であるため、将来の収入を統計などに基づいて見積もる必要があるといった難しさがあります。

適正な補償を受けるには、ふだんの様子を親御さんが記録し、専門的な基準に基づいて見積もることが大切です。

目次

1. 子どもの交通事故が大人の事故と違う4つのポイント

同じ交通事故でも、被害者が子どもか大人かで、賠償をめぐる事情は大きく変わります。ここでは、知っておきたい違いを3つの点から整理します。

① 症状を正確に言葉で伝えられない(特に未就学児)

小さな子ども、特に未就学児は、痛みや不調をうまく説明できません。だからこそ、周りの大人がふだんと違う様子を観察し、記録しておくことが、後で損害を認めてもらううえで重要になります。

② 成長過程にあるため後遺症の影響が長期に及ぶ

子どもは成長の途中にあるため、けがや後遺障害の影響が、将来の進学・就労・生活に長く及ぶことがあります。後遺症が残れば、失われた収入を計算する期間も大人より長くなりやすいのが特徴です。

③ 逸失利益の計算が将来推定になる(働く前の段階)

まだ働いていない子どもは、将来どのような職業に就き、どの程度の収入を得るかを正確に予測することはできません。それでも、算定が難しいことを理由に賠償が否定されることはなく、国の統計をもとに、合理的な見込みに基づいて金額を算定します。

④ 親の代理対応が必要なため、判断の重みが大きい

子どもは自分で示談や請求を進められないため、親御さんが代わりに対応します。提示額に応じるか、後遺症をどう主張するかといった判断が、お子さんの受け取れる補償を大きく左右します。

2. 子どもの交通事故で請求できる賠償金の種類

子どもの事故でも、請求できる賠償金の多くは大人と共通します。基本的な項目は「交通事故被害者が請求できる賠償金の種類・内訳」で説明しているので、ここでは子ども特有の項目を中心にご紹介します。

治療費・通院交通費・付添看護費(親の付き添い)

けがの治療費や通院の交通費が認められます。

さらに子どもの場合は、入院・通院に親が付き添ったときの「付添看護費」も請求できます。自賠責保険の支払基準では、入院の付き添いが1日4,200円、自宅看護や通院の付き添いが1日2,100円とされています。実際の請求では、付き添いの必要性や負担の程度、収入減の有無などを踏まえて、より高い金額が認められることもあります。

入通院慰謝料

事故のけがで入院・通院したことへの、精神的な苦痛に対する賠償です。基本的には、入院や通院をした期間の長さに応じて金額が決まります。

後遺障害慰謝料・逸失利益(後遺障害が残った場合)

治療を続けても症状が残り、後遺障害として認められた場合に支払われます。後遺障害慰謝料はその苦痛への賠償、逸失利益は失われた「働く力」への補償です(計算方法は第5章で詳しく解説します)。

親の休業損害(看護のため仕事を休んだ場合)

おおむね12歳以下のお子さんの看護のために親御さんが仕事を休み、付き添いや看護の必要性が認められる場合には、収入の減少分を損害として請求できることがあります。その額が付添看護費(1日4,200円・2,100円)を明らかに上回るときは、妥当な範囲で実費に近い額が認められることがあります。

学習塾費用・家庭教師費用が認められるケース

入院や通院で勉強が遅れ、塾や家庭教師でそれを取り戻す必要が生じた場合、その費用が認められることがあります。留年で無駄になった授業料など、進級の遅れに伴う出費が考慮されるケースもあります。

死亡慰謝料・葬儀費用(死亡事故の場合)

万一お子さんが亡くなった場合には、ご本人と遺族の慰謝料、葬儀費用、そして将来得られたはずの逸失利益を請求します。

3. 【ケース別】事故状況ごとの注意点

事故の状況によって、賠償の考え方や注意点は変わります。代表的なケースを見ていきましょう。

3-1. 通学中・登下校中の事故

学校の管理下での事故では、まず学校へ報告し、いつ・どこで・どのように起きたかを記録しておくことが大切です。通学・通園中の事故も、「通常の経路と方法」で移動していた場合には、学校管理下の災害として災害共済給付の対象になる可能性があります。

ただし、この給付と加害者からの損害賠償は二重には受け取れず、調整されます。すでに受け取った賠償が給付額を上回っている場合は、その範囲で給付は行われません。反対に、療養が長引いたり障害が残ったりして、算定される給付額が賠償額を上回る場合は、その差額が給付されます。

3-2. 自転車に乗っていた子どもの事故

自転車に乗っていた子どもが事故に遭った場合も、本人に落ち度があれば「過失相殺(かしつそうさい)」で賠償が減らされます。もっとも、どの程度の危険を理解できたかは年齢によって変わるため、子どもの落ち度は大人ほど厳しくは評価されない傾向にあります。

反対に、子どもが加害者となって相手にけがをさせた場合は、本人に責任能力があったかが問題になります。責任能力が認められない年齢・発達段階の場合には、本人ではなく、親が監督義務者として責任を問われることがあります。

3-3. 同乗者として被害に遭ったケース

親が運転する車に同乗していて第三者の車と事故に遭った場合、運転していた親にも過失があると、第三者に対する請求では、その親の過失が「被害者側の過失」として考慮されることがあります。親子のように生活をともにする人の落ち度は、過失相殺で一緒に考えるという判例の考え方です。

他人が運転する車の場合は、こうした関係がないため扱いが異なります。

3-4. 自宅近くの飛び出しなど被害者にも過失があるケース

過失相殺をするには、被害者に事故の危険性を理解し、危険を避けるために行動できる程度の判断能力が必要です。判例上は、おおむね6歳前後が一つの目安とされています。これより小さい幼児は本人の落ち度として減らされないのが一般的です。

4. 子どもの後遺障害認定で気をつけたいこと

子どもは痛みや不調を自分から訴えにくいため、後遺症が見落とされたり軽く評価されたりするおそれがあります。だからこそ大切なのが、診断書の質です。症状を医師に具体的に伝え、検査結果や経過がきちんと記載された診断書を作ってもらうことが、適切な等級認定への第一歩になります。

特に注意したいのが、外から見えにくい後遺障害です。頭を強く打った後の記憶力・集中力の低下(高次脳機能障害)や、事故体験による心の不調(PTSD)などは、本人がうまく説明できず、周囲も気づきにくいことがあります。「前より忘れっぽい」などの学校・家庭での変化を記録しておくと、後遺障害を証明する手がかりになります。

また成長の途中にあるため、これ以上治療を続けても回復が見込めない状態(症状固定)の判断も難しくなります。急ぎすぎると本来の補償を取りこぼすこともあるため、慎重な見極めが必要です。

詳しくは「後遺障害等級と後遺障害等級認定とは」のページをご覧ください。

5. 子どもの逸失利益はどう計算する?

逸失利益とは、「事故がなければ将来得られたはずの収入」を補うお金です。ところが子どもはまだ働いていません。将来どんな仕事に就き、いくら稼ぐのかは、本来だれにも正確にはわかりません。

では、わからないから賠償されないのかというと、そうではありません。裁判所は統計を使って合理的に見積もります。使われるのは「賃金センサス」という、政府の賃金調査に基づく平均収入の資料で、給料明細のない子どもでも公平に収入を見積もれます。最新(令和7年)の全労働者平均は年およそ545万円です。

逸失利益は、この平均賃金を基礎に、〈基礎収入×失われた働く力の割合(労働能力喪失率)×期間に応じた係数(ライプニッツ係数)〉で計算します。子どもは就労前で対象期間(原則18〜67歳)が長く、金額が数千万円になることもあります。

たとえば10歳の子に後遺障害10級が残った場合、基礎収入を約545万円、10級の労働能力喪失率を27%とします。18歳から67歳までに対応するライプニッツ係数は20.131です。これらを掛け合わせると逸失利益は約2,962万円。さらに10級の後遺障害慰謝料(裁判基準でおよそ550万円)が加わるため、後遺障害分だけで3,500万円前後になることもあります。

6. 親がやるべきこと|事故直後から示談までの対応

まず、事故直後は必ず警察へ通報し、けががある場合には診断書を提出して「人身事故」として届け出ることが大切です。けがをしているのに物損事故のまま処理されると、人身事故としての記録や捜査資料が十分に残らず、後でけがと事故との関係を争われたときに不利になることがあります。

治療では、まず救急や小児科で全身を診てもらい、骨や関節の症状があれば整形外科にかかるなど、症状に合った診療科を選びましょう。お子さんは不調をうまく訴えられないため、痛がる場所や以前との変化を親御さんが日々記録しておくと、後の証明に役立ちます。

保険会社から示談金額の提示があっても、すぐに応じる必要はありません。提示額は保険会社の基準によることが多く、裁判基準より低い場合が少なくないためです。また子どもは自分で示談できないため、示談には親権者の同意が必要で、親自身も同じ事故の当事者で利害が対立する場合には、家庭裁判所が選ぶ「特別代理人」が必要になることもあります。

詳しい進め方は「交通事故の示談交渉では何を話し合うのか」、注意点は「交通事故の示談交渉で損しないために|人身事故と物損事故の違いと重要ポイント」をご覧ください。

7. 【静岡の方へ】子どもの交通事故は早期に地元弁護士へ相談を

ここまで見てきたように、子どもの事故は損害の見極めや手続きが複雑で、ご家庭だけで対応するには負担が大きいものです。そこで頼りになるのが弁護士ですが、「費用が心配」という方も多いでしょう。

実は、多くの自動車保険には「弁護士費用特約」が付いており、これを使えば親御さんの保険でお子さんの事故の弁護士費用をまかなえます。

保険等級にも影響しないのが一般的です。静岡県内での事故に詳しい弁護士へ早めに相談することで、見落としがちな損害も含めて適切なアドバイスを受けられます。詳しくは「静岡の交通事故は地元弁護士が有利?全国対応事務所との決定的な違い」の解説をご覧ください。

まとめ

子どもの交通事故は、長い人生に影響する重大な問題です。付添看護費や逸失利益といった子ども特有の項目を正しく理解し、統計や判例に基づいた適正な賠償を求めることが、お子さんの将来を守ることにつながります。

通学中の事故は「通常の経路・方法」であれば災害共済給付の対象になりますが、損害賠償と重複しては受け取れず、調整されます。すでに受け取った賠償が給付額を上回っていれば、その範囲で給付は行われません。反対に、給付額が賠償額を上回る場合は、その差額が給付されます。

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よくある質問

最後に、子どもの交通事故に関してよくいただくご質問にお答えします。

Q1. 子どもの交通事故で、親が付き添った場合の付添看護費は請求できますか?

はい、請求できます。原則として12歳以下の子どもに親などが付き添った場合、入院の付き添いは1日4,200円、通院や自宅での看護は1日2,100円が目安として認められます。通院の付き添いは、12歳以下であれば医師の証明がなくても認められるのが一般的です。

Q2. 子どもの過失も大人と同じように差し引かれますか?

いいえ、同じではありません。落ち度を差し引く(過失相殺)には、本人に事故の危険性を理解できる程度の判断能力が必要で、判例ではおおむね6歳前後が目安とされています。これに満たない幼児は、本人の過失として減額されません。ただし、付き添っていた親などの落ち度が考慮されることはあります。

Q3. 通学中の交通事故では、学校の災害共済給付と賠償金は両方もらえますか?

原則として、二重には受け取れません。

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